にく


アトリエの前でスズメが死んでた。
たぶん軒下に巣を作ってたヤツのヒナが落ちちゃったかなんかだと思う。

そういやAnnette Messagerの作品もスズメを使ったヤツだったよなー。
http://rosydelights.blogspot.com/2007/08/annette-messager-knit-for-sparrows.html
スズメを子供に見立てて服を着せたり歩行器で無理に歩かせたり。
ただ、愛しても虐待してもそれが所詮スズメってとこにニヒリズムやらガーリーやらが隠されていたり。翼があっても馬鹿な鳥。
ガーリーって調べてみたけど、ガーリーという用語を世間一般に流行らせたZipperの編集長曰く、「女の子バンザイな文化」らしいです。


話は飛んでマンガの「こどものじかん」の話になります。

こどものじかん 1 (アクションコミックス)

こどものじかん 1 (アクションコミックス)


前から気になっていたので全巻大人買いです。
「男性向け少女マンガ」というコンセプトを忠実に再現していて好感が持てます。まさにそうとしか表現できないジャンルのマンガ。
「少女マンガ」というのがオンナノコオンナノコしてた人にしか受け入れないところに、「男性向け」視点を持ってきたのが多分面白い感じになってるんだと思います。

最近考えてるのは「オンナノコ」の悲劇のカタルシスの偏向性と、それを繰り返すことを厭わないのはどうしてなんだろーなー、ということで。まあそれがガーリー文化からたぐれるかもしれない、とは思っているのだけれども。
こどものじかん」も、どこかの少女マンガの類型に従っています。死んでしまったキャラをその子供に重ねる男キャラ。叶わない恋心。コンプレックスのせいで人付き合いがうまくいかない。トラウマで声が出なくなるなどなどなど。
はっきり言ってしまえばこんなどっかで見たような設定にはウンザリです。
ただ、この「ウンザリ」がいっぱい夢いっぱい詰まっているのが少女マンガなのだと自分は考えています。今まで出会った少女マンガはそんな感じでした。
こどものじかん」はそこにさらに男性視点の「エロ」を加えることで、割といろいろ全てをダイナシにしようとしています。ダイナシにすることで境界線を越えていける強さも手に入るんだろうけど。
強さって醜いなあ。


閑話休題

スズメと言えば高校生の時、同級生のフィリピン人が、地元ではスズメの丸焼きを自分たちで作って食べるって話をしていたのを思い出す。

動画はタンザニアの子供たちがネズミを捕って食ってる映像だけど、フィリピンでも多分こんな感じ。一回丸焼きにしてからハラ切り開いて肉をウラッ返して生焼けの部分が無いように上手く焼いてるのは、さすがだなあとか思いました。
鳥の屍骸をよく見つけてしまう私ですが、見つけるとかならず「食えるかな?」と思ってしまうのはこのフィリピン人の話と、小説「ハンニバル」の中で拾った鳩を食べるシーンがあるからなのだと思います。

ハンニバル〈上〉 (新潮文庫)

ハンニバル〈上〉 (新潮文庫)

”バーニーは歩道に立っていた。死んだ鳩を両手にのせている。連れ合いの鳩が低い羽音をたてて頭上の電線まで舞いあがり、そこに止まって彼を眺めている。バーニーは歩道のわきの芝生に死んだ鳩を横たえて、乱れた羽毛を撫で付けはじめた。それから、その大きな顔を上向けて電線にとまっている鳩を見上げると、何か言った。彼はまた歩き出した。生き残った鳩は地面に降下して、死んだ鳩のまわりをよちよちと歩き出す。バーニーはもう振り返らなかった。”

バーニーは現在病院用務員で、昔レクター博士の看守をやっていた。彼はレクター博士ソクラテスやスエトニウスやギボンを教わった。
クラリススターリング捜査官は彼に、レクター博士との「付き合い方」を教えてもらう。ある素質が別の素質を消し去ることは無く、良い資質と恐るべき資質は両立することを_

”「あれは、人間の、遺伝に基づく固有の行動を話題にしているときでした。レクター博士は”宙返り鳩”における遺伝を例に引いていましたな。この種類の鳩は、空中で何度も何度も宙返りをくり返しながら地面に降下してくる。しかも、この鳩には、浅く宙返りするものと、深く宙返りするものと、二種類あるんだそうです。その場合、深く宙返りをする鳩同士をかけ合わせるのは禁物なのだと。じゃないと、産まれた子供はとてつもなく大きな弧を描いて宙返りして、地面に激突死してしまうからです。で、博士はあのときこう言ったんですよ__”スターリング捜査官は、深く宙返りする鳩だ、バーニー。彼女の両親の一方がそうではないことを祈りたいな”」
 クラリスはしばらくその言葉の意味を考えた。それから、たずねた。「あなたがポケットにしまった鳩は、どうするの?」
「羽をむしって、食うんです」バーニーは答えた。”


自分で羽をむしって食うのってどんな感覚なんだろうな。
一回やってみたいけれども。


”遺伝に基づく固有の行動”で思い出した。指輪世界のブログ記事、の引用。
最近引用だらけだな。まあメモ代わりだから良いか。

” 動物行動学者の先達、コンラート・ローレンツ先生(ISBN:4622015994)によると、たとえば鳩のつがいを鳥かごに入れておくと、一方が一方をえんえんとつつき続け、羽をむしりつくして、配偶者を殺してしまうことがある。鳩には、相手の攻撃衝動を抑えるジェスチャーが装備されていない。鳩は野生状態では、ちょっとつつかれて不快な時点で飛んで逃げれば済んでしまうし、くちばしの殺傷力も低い。
 狼には、ひっくりかえって相手に喉笛を見せるという降伏のジェスチャーがあり、一方がこれをすると、相手の狼は強い攻撃衝動を抱きつつも、同時に強い抑制がはたらいて、「非常に噛み付きたいのに非常に噛み付けなくなる」。狼は四六時中、狼に似た他の動物を殺す必要があり、鋭い牙もある。降伏の儀式はこれに対する適応であり、システムとしてはややこしいが、進化はそういうふうに神経系を形成することがある。”

http://d.hatena.ne.jp/ityou/20050529